私が退職後、農園を借り家庭菜園を初めてもう5年ほど過ぎている。農園で最も重要なポイントの1つとしては出来るだけ農薬を使わないという考え方である。当初はこの考え方をそのまま貫いていこうかと思ったけれども、いやいやそう簡単には行かなかった。
 葉っぱを少し食い荒らす程度の害虫ですら、苗が初期の頃であれば大きな被害が生じるということが畑で実際作物を作ってみると否応なしに知らされたのであった。ただ最初の頃は、それでも出来るだけ農薬を使わないようにしようとして、ある程度の虫食われは我慢し、虫食われによって枯れてしまう苗以上の本数を植えることによってそれをカバーするという考え方であった。しかしながら、私の借りている貸し農園の周辺も同じような野菜をいっぱい作っている関係で、あちらこちらで発生する害虫は、別の畑で駆除しわが家で全く駆除しないということであればまさに害虫の集中砲火を浴びるというような事態になりかねないというのが現実であった。
 昨今畑で使う作物用の農薬は安全性が特に強調されており、使用基準を守ってきちっと使用している場合には、人に対する害は心配する必要は無いというレベルだという認識としてはあった。  農薬を使うには若干の抵抗はあったけれども、決められた通りの希釈で決められた作物に散布するということについては、やむをえないことだということで使い始めたのであった。
 もちろんこの時の農薬の考え方としては、目に見える被害、いわゆる作物が成長する段階において例えば葉っぱにつく虫、蔓につく虫とか、果実そのものにつく虫そういったものに対する駆除という考え方が主体であった。もちろんそれはそれで効果は十分あったが、問題はそれから数年して今年になって初めてもっと別の問題として具体的に上がってきたのであった。
 今年7月頃、例年のとおりトマトを定植し大きくなって花が咲いて、実が付き始めた頃になぜか突然枯れ始めたのである。このような事は今まで1度も経験したことがなく驚いてしまった。インターネットで早速この枯れた原因や対処方法について調べてみたところどうも青枯れ病という病気のように思われた。畑の先輩であるI氏にこのトマトの枯れた状況について尋ねてみたところ、やはり青枯れ病の疑いが強いという説明であった。
 薬を使ってこの青枯れ病を起こす病原菌を退治すればいいのかという風に最初考え、ネットで色々調べてみたところ、この青枯れ病に対する農薬というのはなく、方法としては土壌消毒が必要で、それには毒性の強い薬剤を使わなけれならないという説明である。
 一般の貸し農園レベルで使える農薬ではないということで、青枯れ病対策は極めて困難な問題となってきたのである。では何か対策がないのかというと、実はこの青枯れ病については土壌消毒するというのが一応の対策であり薬剤以外に土壌消毒の方法としては、日光消毒という手である。ただこの日光消毒というのは夏の炎天下の太陽の光の元、ビニールシートで畑をしっかり覆いその熱で土壌中の細菌・ウイルスを殺す手段である。したがってビニールシートで畑を被って行う土壌殺菌方法は夏の7月から8月にかけてしか手段としては用いることができないということになっていた。
 いう事は今年すでに時期を過ぎており、今のような寒い時期に熱で畑の土壌を殺菌するというのは実質不可能であり、これは来年の夏の作業として残ってきたのである。そしてこの青枯れ病の原因である土壌中にこのような病原菌が増殖してきたのは、連作等が影響しているらしい。したがって来年の夏は青枯れ病の発生した周辺の土地を1ヶ月近くビニールシートで覆い熱による消毒をしなければ駄目だろうということになっている。

 もう一つやはり今年の秋に悩ましい問題点が発見された。それはさつまいも収穫した的に明らかとなったのである。昔年まではサツマイモは特段問題もなく収穫でき比較的作りやすい野菜という認識であった。今年もつるがどんどん大きく育って何の問題もなく収穫時期に入ったわけであった。けれども、さつまいも収穫してみると表面がいたるところ虫か小動物に食われたかのようになって、表面が滑らかなサツマイモは限られるほどしかなかったのである。
 食べる分にはその部分を斬り捨てることによってとりあえずは何とかなるものの、見た目にはいかにも虫に食われたさつまいもというイメージが強く、とても人に貰ってもらうようなわけにはいかないようなレベルのものばっかりとなってしまった。どうもサツマイモの食害も土壌中に様々な害虫が存在し、食われたらしいということである。これもつまり土壌の中に害虫が存在しているということが初めて今回自分なりに認識することとなった。

 今まで土壌中における病原菌あるいは害虫に関してはそれほど考えなくても済んできたのであったけれども、今年は相次いで土壌中の異変が表面化してきたのであった。これを回避するためには害虫の場合は、土中に害虫駆除農薬を鋤こんでやることにてある程度解決するらしいという事は分かった。しかしもうすでに秋用の畝は秋の野菜が植わっており今の段階で土壌中にこのような薬を散布し畝を作りなおすというわけにはいかないので、結局このままこの秋から冬を越し、来年の春に対策ということになりそうである。
 とりあえず土壌殺虫剤として販売されているダイアジノン粉剤という薬剤を購入してきて来年春に備えているというのが現状である。そういうことになるとやや心配なのは、今植えてある大根とか人参、ごぼうといった根菜類の土中における害虫による食害である。まだ今年の収穫はこれから先になるためハッキリした事は言えないけれども、時々間引きした大根をよくよく見てみると表面にやはり食害らしき跡があるものもあり今後これ以降の収穫に若干の不安を持たもたらすところもあるのである。