山歩き

 昨日11月3日(土)に1年ぶりに御在所岳に登山した。
 御在所岳山頂周辺はちょうど紅葉が見頃という新聞報道もあり11月3日文化の日という祭日とも重なってかなりの人出は予想されていた。すでにその混雑度は桑名駅で電車に乗ろうとした時から始まっていた。
 土曜日とはいえ今日は祝日休みのはず、それにしては桑名駅には多くの学生や乗客でホームはかなり混雑していた。急行松阪行き近鉄電車に乗ったが満席で立って乗ることとなった。そのまま四日市まで来て今日の登山者大西さんと合流する。
 大西さんの話によれば既に名古屋駅でも満席状態であったとのこと。ここから湯の山温泉行きの電車に乗り換える。本来なら近鉄名古屋本線の混雑と比べると湯の山線はそれほど混雑しないのであるが、今日はどうしたことか四日市駅始発の電車ですでにすべての座席が満席に近い状態であった。もちろん全てが登山客というわけではなく一般の乗客も大勢乗っているわけであったけれども、学生・一般客に登山客と普段見られないほどの混雑具合であった。
 湯の山温泉に近づけばお客さんはどんどん降りて最終的には一般客と登山者が少数残るのみというのが通常のパターンなのだが、この日に限りほとんど終点までほぼ満席のまま湯の山温泉駅についてのであった。そこからバスに乗り換えて湯の山温泉駅まで行くのであるけれども、びっくりしたことに登山客が大勢列をなしてバス停に並んだ。まあこの時期紅葉シーズンでもあり多少の混雑は想定していたけれども、湯の山温泉行きバスに登山客が列をなすという事は過去経験のないような状況となった。
 時間が来てバスが出発しようとしたがドアが閉まらない程の満員である。湯の山温泉に着いた時、バスのドアが内側に開く構造のため乗客がステップの上に上がるだけでも一苦労の状況であった。
 さていよいよ今日ここから御在所岳登山である。どのコースを取るかということについては電車の中で中道をいこうという話に決まっていた。とりあえず一の谷茶屋まで歩く。ここからいよいよ中道が始まるのである。
 さて今日は天気予報によれば日中はよく晴れて気温もこのところ少し下がりめであったけれども、本日に関しては比較的暖かく絶好の登山日和という予報ではあった。しかしながら出発する時から天候は思わしくなく、湯の山温泉駅から一の谷茶屋まで歩いてくる間も空は厚い雲に覆われており、日差しは全く見られない。その後次第に回復すると期待はしてにいるけれども、空模様の雰囲気からして晴れてくるとはとても思えない。
 おまけに風も冷たく何やら先行きあまり良い前兆とは思えない空模様である。さて一の谷茶屋から登山道に入ってすぐに表道と中道の分離点に達する。ちょうどここは鈴鹿スカイラインの車道が通っており、登山客の多くは道路際に車を止めて歩きはじめるため、一気に登山客がここで増えてきた。
 昨年までとは違って今年はなぜか高齢者よりも若い人の数の方が多く、それも今まで見たこともないほどこの付近に大勢の登山客で混雑を呈していた。
 中道を登り始めていきなり渋滞にはまってしまった。中道は登り始めにすぐ道が急なところもあって初心者が時々立ち止まったりすることもあるため、まあその影響で若干の渋滞が始まったのかというのが最初の印象であった。ところが少し登ってはまた渋滞、少し登ってはまた渋滞という状態が繰り返されることになり、これはただ事ではないなという感じがしてきたのである。
 しばらくすると人の流れがぱったり止まってしまった。確かにこの中道は歩きにくい難所はあるが、全く人の流れが止まるほど渋滞をするようなひどい道では無いはずで、初心者ばかりならいざ知らず、なぜこうも進まないのかとだんだんと気になりだした。
 確かに1部の人は喘ぎ喘ぎスタイルになってきているいることも事実であるけれども、それは登山者の中のごく1部であり、多くの登山者はまた昇り始めて間もないこの場所でそれほどばてている様子には見られなかった。それにしてはこの渋滞、ほとんど進まないのは一体どうしたことなんだとあれこれと考えてみるに決め手は無い。
 延々と続く登山道全体が人で埋まって全く動けないなどということは想像すらできないため、やはり難所で初心者がつまづいて渋滞しているのであろうという風に考えてその後も人の流れについて徐々にではあるが登っていったのである。
 所々で休憩をとっている人を横目にできるだけ早く前に急ごうとして結局、オバレ石までやってきたけれども、ここでも休憩をパスしてさらに前へ進むこととした。しかしどちらにしても人の流れは途絶えることはなくやはりまた渋滞にはまってしまった。やっとの思いで地蔵岩の近くまでやってきた。いつもの時間の倍近くを要している。もうこの辺まで来ると全体のほぼ3分の1ぐらいには達しており、登山客自体も分散しばらけてくるために普通なら渋滞も解消してもいい場所だと思われたけれども、相変わらず前に多くの人が数珠つなぎにつながって流れており、ほとんど動きがその後ろで止まってしまうような状態がさらに続いていた。
 空模様は一向に回復せず風も冷たく、持って行った防寒着も結局歩いているうちにいったん脱いたものの、歩くペースが遅く立ち止まっているうちに体が冷えてしまうために新たにまた着込むなどということを繰り返していた。
 ところが下山してくる登山客がこの渋滞状況について話を聞くと、すでに中道最大の難所であるキレットまでずっと人波が途切れなく続いているという。これは只事ではない大渋滞であると考えざるを得ない。確かにキレットでこれだけ大勢の人が集中すれば渋滞するであろうという事は予想はされたけれども、キレットの相当手前からほとんど人の流れが途切れないし、前に進まないという事はやはり尋常な状況ではないと思えてきた。
 キレットから数百メートル手前のところから全く動かない状態となってしまった。やむを得ないのでここで登山者は皆それぞれ通過待ちのためにしばらく休憩を取りながら休むというような雰囲気ではあったけれども、 30分たち1時間たってもほとんど前に進まないという普通では考えられないような状態となってしまった。そのうち風も一段と冷たく空模様も一向に晴れる気配はなくどんどん雲も厚みを増すばかり。
 もうこれ以上ここで待っていても見通しが全く立たないというような気になってきてさぁどうするかという話になった。意外ともうここで早々と登頂を諦めるという話になってしまった。もともと御在所岳は毎年、登山しており頂上に到達しなければならないほどのものではないし、まあ紅葉を見る目的とは言えこのような天気が悪く風も冷たい中で紅葉を愛でるというような気分も消えうせて帰ると決めたならばもう後は一目散に降るという気分になってしまった。
 登って来た時も大変であったけれども、降る時になってもまたこれまた大変である。というのは今まで既に渋滞をしてる上りの登山客の間を縫って下り始めるわけであるので、なかなかスムーズに降ることはできない。どこまで下がっても登ってくる登山客が列をなしてそこに立ち止まっており、その間を縫って登ったり降りたりという難所部分の道もあり、降るのも儘ならない状態が相当長時間にわたって続いたのであった。
 オバレ石まで下がってきてまだそれでも渋滞している登山客が列をなしておりそこから下って裏道への脇道あたりまできてもまだ登山客の列で埋まっていた。一部の登山客は裏道へ抜け出す人もいたけれども、果たして順調に登山できるのかどうか今日のこの混雑具合では何とも言えないような気がしてきた。
 ようやく中道登山道の入口まで降りてきたけれども、まだ今のこの段階でも登頂をめざす登山客が切れないというのはまさに過去例のないような大渋滞であった。中道登山道入口から一般道をしばらく歩いたところで、せっかく今日山頂で飲むために持ってきたビールや、おつまみ弁当類もあるためこのまま引き返すのもつまらないということで、結局温泉中心街にある休憩場所でビールを開けて遅めの昼食というような形となったのであった。
 バス停の湯の山温泉駅まで降りてきたものの、今度は車が大渋滞で列をなして湯の山温泉に向かっており、バスがいつ到着するかメドがつかないという状況であったため、さらにここから近鉄湯の山温泉駅まで歩いたのであった。大型バスなど列をなして温泉の方面に向かっており、ここでも車が大渋滞して動かないような現状があった。
 何十年と御在所に限らず鈴鹿山脈に登ったけれども、渋滞の列に巻き込まれて登頂を諦めたというのは今回が初めてであった。
 ただ今回大量の登山客が殺到したけれど、特に若い人が多かったという点がこれまでと様子を異にしていた。山ガールと称する若い女性が多数見られたことだ。今までよりは華やかな雰囲気があり登山にも活気が見られるのは良いことである。