目の傾き現象

 もう10年くらいも前になろうかと思うけれどもカメラで写真を撮っていると必ずそのうち何枚かが水平線が傾いていたという現象が起きていた。最初の頃は単にカメラの傾きが原因で、慌てて写真を撮ったりした時に傾いたのであろうと、どうして傾いたかについては思いを巡らしてはいなかった。
 その後も、カメラを構えるとき思い出したように水平線について注意を払って撮るように努めたけれども、何枚かがやはり傾いてしまうのである。その頃から少し変だなという思いはあったけれども、カメラを構えるときにその都度水平線を確認するという行為を繰り返すことによって多少は以前よりはマシになったけれども、やはり相変わらず何枚かの写真は傾いた状態で写っていたのである。
 その頃から何か原因があるのではないかという漠然とした考えが芽生えたのであった。その後しばらくして九州へ旅行した時のことである。レンタカーを借りて走った2日目。当日は途中から雨が降り出し見通しもやや悪くなってきた。午前中は特段問題はなかったけれども、夕方になるに従って次第に薄暗くなると同時にものが見ぬくくなってきたのである。特に夜になってライトがつく頃になると景色が二重に見えて車の運転に支障が出てきたのであった。その時はなんとか恐る恐る乗り過ごしたものの、これまでこのように夜間運転をする時これほど見にくいといった経験はなく、これは一体どうしたものかとその時はかなり考え込んでしまったのであった。
 ただ幸い翌日は天気も晴れて昨日のような状況ではなく、視界に関しても特に問題はなく、昨日は何か特別な事情でもあったのかな程度に考えてそれで終わったのであった。
 その後も写真の傾きは相変わらず回復せず、原因をいろいろと自分なりに考えていたところ、どうも右目の傾きに異常があるのではないかと感じるようになった。両目でものを見る時はそれほどでもないけれども同じ位置で、それぞれ片一方ずつ閉じてものを見ると、景色が上下にずれるという事を見つけだしたのであった。左右の目を交互に開けてみると明らかに傾き具合が違うということである。つまり左を基準にすると右の傾きが目立ち、逆にするとまた同じように傾きが違っているのである。
 どちらかが正常であればどちらかが異常ではないかとこのことに気がついて左目右目でそれぞれファインダーを別々に除いて写真を撮ってみたところ、左目でファインダーを覗いて写真を撮った時は水平であったにもかかわらず、右目でファインダーを覗いて写真を撮るとそれが傾くという現象が発見できたのであった。どうやら右目に傾きに異常があるらしいということを見つけだしたのである。
 これは目に疾患があるのか、あるいは単に目の水平線が傾いたことによる傾きなのかよくわからなかったけれども、目そのものに対する異常という症状も現れていなかったために、単に例えばメガネで光の屈折を変えることによって矯正できるのではないかと考え、メガネ店に赴いて相談をしてみた。このことを説明し眼鏡を作ってもらったものの、出来上がった眼鏡をかけてみると非常に見にくいのである。このため再度調整してもらいつくり直してみたもののやはり、見にくくて使い物にならなかった。またまた作りなおすのも抵抗がありあきらめてしまったのであった。
 
 その後も状態は改善されず次第にものを見ることに対して疲労感も重なってきたため放置しておくわけにもいかないと市内の眼科を受診。この眼科では当初一過性の傾きの可能性があるということで、とりあえずビタミン剤を飲んでしばらく様子を見るということになった。1ヶ月後再度検眼してもらっても症状は変化せず、もう1ヶ月薬を飲んでみるということになった。しかし2ヶ月経過しても変化はなく医者の判断でビタミン剤による投薬ではこの問題は解決しそうもないということで投薬は中止ということになってしまった。1、2ヶ月後にもう一度受診して様子を見てみようということで終わってしまったのであった。
 物が傾いて見えるとため日常生活にも不都合が続くため、別の眼科を受診してみた。ここでも結局効果的な説明がないまま終わり解決策がないままさらに時間が推移していたのであった。
 そうこうしているうちにパソコン画面を見ているうちにも傾きが顕著に現れ、二重になるため疲労感が重なって、上下に分断している症状が放置できないところまで進行してきたしまった。再度ビタミン剤を処方してくれた眼科に受診をしてみると、やはりその後もものが上下に傾くズレがあるという点については全く変わらなかったが、対処方法として初めてレンズの屈折率を利用する説明があった。
 ただ傾き具合は日によって幅が異なる場合が想像されるため、2週間後に改めてもう一度測定しすることとなったが、結局2週間後も傾きの幅に変化はないということが判明。
 
 眼科で処方箋を書いてもらいメガネで矯正することとなった。まったく想定していなかったけれどもこの眼科医のすぐ近くにある桑名市内のメガネ店を案内された。そのまま処方箋を持って出かけていったところ、当初は仮性の可能性もあるということからメガネの上に1枚のフィルムを貼る方法が処方されていたけれども、眼鏡屋さんの話ではレンズにフィルムを貼るというのはレンズが曇るし見栄えも良くないことから、プリズムレンズにした方が、見やすいという説明で結局メガネそのもの取り替えることとなった。
 処方箋によると右目を約3度傾けたレンズを調整するという話である。その後数日ほどでレンズが取り寄せられたるため再びメガネ屋さんも訪れ新しく右目に3度の傾きを持ったレンズを取り替えてはめてみたのである。驚いたことに一気に傾きは解消されすっきりと見やすくなったのであった。10年以上も長い間にわたってものが上下に離れいわゆる二重に見えるという現象はようやくこれによって解消したのであった。
 今回プリズムレンズに変更したのは手元メガネで、運転するときには遠近両用メガネを使っており、車の運転用に遠近両用メガネもこのようなレンズに変えようと、相談してみたところ遠近両用形でプリズムを入れるというのはあまり適当とは思われないのでむしろ単一焦点のレンズにして、プリズムを入れた方がいいという話となり、単焦点用のレンズにプリズムを入れたものを調整してもらった。
 手元用メガネと運転用のメガネと二本立てとなったものの、やっとこれでものが二重に見え傾いて見えるという現象は解消しすっきりとものが見れるようになったのであった。