台湾旅行その1

 台湾へ出かけることになって、子供がやや古くなった台湾旅行案内の本を出してきて今回のコースの一覧表を見ながら「変だな、中正国際空港というのがなくなって桃園国際空港に変わっている」という。別に空港が新しくできたわけではなくて、元々あった中正国際空港が桃園国際空港に名前が変わったらしい。その時はそれ以上考えず旅行の案内パンフレットをそのまま気にも留めずに持って出かけたのであった。考えてみれば国を代表する表玄関である空港の名前を変更するというのは普通に考えるとやはり何かそこに大きな理由があるはずだ。それは台湾に行ってみて初めて気がついたのであった。
 台湾旅行2日目に忠烈祠という日本で言えば靖国神社のようなところに相当する所にガイド氏が案内してくれたときの話である。ガイド氏まだ20代後半ぐらいの若い男の人であったが、忠烈祠では儀仗兵が1時間おきに警備交代を行っているが、台湾では徴兵制がまだ行われており自分も1年間の徴兵義務を実は果たしてきた。台湾ではまだ対中国との戦争を完全になくなったわけでは無いために、現在も陸海空3軍が中国との戦争に備えて怠りがない状況にある、しかしここで行われている儀仗兵交代はあたかも何かイベントが行われているような雰囲気であり、戦争への備えという本来の趣旨からそれているのではと言う。
台北市内から忠烈祠まで来る途中にいくつかの軍の司令部があり衛兵が立っているのが車の窓から見えたけれど、ガイド氏の話によればこれらの施設は地図には記載されていないという。なお、台北から花蓮へ電車で移動しているときミサイルが配備してあるところがあったり、花蓮空港では軍事基地のため写真撮影は厳禁と、そのとき同行していたガイドさんから注意があった。台湾は今でも対中国との関係で緊張した状態にある。

 さて、ガイド氏は台湾南部高雄市の出身ということで、民進党の支持者という。中正記念堂という台北市内の観光施設は国民党時代の蒋介石崇拝施設でガイド氏にはあまり乗り気ではないように見えた。実はここも民進党が政権をとったときに「台湾民主紀念館」と名前を変更したものの国民党により、再び前の名前に戻されたという経過をとっていると説明があった。
 中正国際空港ももともと桃園県という場所に建設されることになっており、空港の名前も桃園国際空港と名付けられることになっていたらしいが、蒋介石の本名である中正と言う名前に置き換えられた。その後民進党が政権をとり名前が改められた。となると再び名前が変更される可能性も無いわけではなさそうである。政権によって重要施設の名称が変わるというのは台湾にはかなり激しい政治的対立があることを示している。
 ところで台湾では近年中国からの観光客が増加しているという。私たちが行った故宮博物館でも中国人の団体で満員となり身動きができないくらいであった。
ガイド氏は博物館の仲では尖閣問題のような政治の話は絶対にしないようにと念を押された。数ヶ月前に日本人と中国人とその件でトラブルになったということだ。
 国民党が中国との経済交流を積極的に進める政策をとり始めてから中国人の観光客が増加しているけれど、その分いろいろな懸案も増加して、民進党支持者からは激しく反発されている。

 日本は台湾を中国と国交を結ぶ段階までは中国を代表していた。しかしその後中国を正式な国として認めたことから台湾との関係は政府レベルでは断絶して現在に至っている。旅行中にふと思ったのだけれども、もしなにか不測の事態が起きた場合、海外に行けば日本大使館があるけれども、台湾に関しては日本大使館というものは存在していない。考えてみれば妙な台湾と日本との関係ではある。したがって何かことがあれば交流協会に行くことになるのである。このような事は台湾に出発するまであまり深く考えていなかったけれども、よくよく見てみれば微妙な難しい問題を含んでいるということがわかった。

 今は民進党から政権を奪い返した国民党が政権をとっている。国民党の政策をひとことで言えば中国との経済交流を活発に行うということであり、大企業優先、原発建設促進など経済拡大路線である。その結果財政赤字、経済格差の拡大をもたらしているという。そしてもうひとつ大きな問題は、台湾の中で意見が二分している、中国従属か台湾独立かという根本的なことが争いの元になっていることである。民進党がこの点を批判し、デモによってその反対の意志表示している。今回旅行中でも総統府の前で大規模な反国民党政権デモが行われていた。日本のマスコミにはあまり大きく報道はされていないけれども、現在台湾での国民党政権に対する民進党側の反発は相当根強いものがあるようで、デモの翌日、再び総統府へ出かけたらバリケードを築いてデモ隊の規制をかけようという工事をしているところであった。
 ということで台湾旅行は政治旅行の話になってしまったが、旅行そのものは天気に恵まれ気温も南部の高雄市では28度と日本の夏のような状況になって汗をかきながらの観光であった。日本語も通じるし、食べ物も日本人向きで、コンビニも安くまた出かけてみたい。


       九份                          
 


       忠烈祠
 
       

       故宮博物館                         


       太魯閣峡谷
 


       蓮池潭                          
 


       六合夜市

 
      中正記念堂(黄色の帽子はデモの人)            

 
       龍山寺
 

 
      二二八公園                       

 
       総統府
 



       バリケード工作中