中国の囲碁
囲碁将棋チャンネルの中国流星戦を見ていた。これは中国のトップ棋士が参加して行われている囲碁のテレビ番組で、日本でも同様な番組が放送されている。
番組のスタイルは棋士が別の部屋で対戦しているのを、司会者と解説者の2人が解説用大盤で対戦の進行に合わせて石を並べながら、テレビ視聴者にわかりやすく説明する。
この点は日本も中国も全く同じである。
しかし、中国と日本とは一風違った司会者・解説者のやりとりが見られるのでここで少し書いてみる。
日本の場合、解説者は通常高段者の男性で、司会は女性棋士。そして進行はアシスタント役の女性が解説者の話を聞くというような進め方である。
一方、中国では同じように男性の解説者と女性司会者が対戦に合わせて大盤解説しているのだけれど、交わされる会話というのはかなり日本とは異なっている。
日本の場合は女性司会者はどちらかというとアシスタントに徹底しており自分自身の考えや意見を現在対局してるその場面で述べるということはほとんどない。
中国の場合は女性司会者が積極的に自分の意見あるいは自分の見方を解説しているというところが大きな違いだと思う。
戦いは終盤に入って、白が大模様をほぼ確定地とし優位に試合を進めていた時のことであった。黒が模様をほぼ完成したところに敢然と打ち込んでいったときのことである。
テレビを見ている私も含めて、多分多くの人は白の確定地のような所に、単独黒が入ってゆくなど日本の碁ではめったに見たことがないような展開となった。
当然周りが全部白で取り囲まれている中で黒が入って、果たして生きることができるのかどうかという話になった。
女性司会者は「こんな所に黒が入っていってどうするつもりなんでしょう、もしここで生きることができなければ、ただでさえすでに白有利なところなのに。死んでしまえばもう試合が終わると思いますが」、一方男性解説者は「多分なんらかの見通しがあってここに打ち込んでいったと思いますが、苦しいことは確か」。コメント。
さらに進行し、ますます白に包囲されて誰の目から見ても生きる方法がないところまで追い込まれた時、女性司会者が「この場面でしたらもう白の勝だと思います。黒は投了する時期に来たのではないのですか」という。一方男性解説者「黒に極わずかに石の活力が残っているが、黒が相当厳しい事は間違いない」
ところがである。プロでも大失策を犯すことがあるのだ。まっ白な白模様の中で黒が生きてしまっただけではなく、それを取り囲んでいた白の大石が逆に黒に取られてしまったのである。
そこでまた女性司会者が「白地であるところに黒に生きられた上、取り囲んでいた白が全部取られてしまったのでは、もうこれは白は投了するしかないと思いますが、まだ打っている。これはどういうことでしょうか」と尋ねる。男性解説者は「プロは潔くあきらめるというのも1つの方法ではあるけれども、一途の希望でなお再逆転の可能性があれば、それを目指して打つこともある。この場合投了するかしないかは個人的なものの考え方にもよるので、今のところ投了しないことについて何とも言えない。ただ私も見る限りここで再逆転の可能性は全くないと思います」コメント。
結局最終的にやはり白が大逆転負けして投了しこの試合が終わったのであった。
テレビ囲碁対局について
テレビ囲碁は時間の関係もあり、対局持ち時間は一手30秒以内途中10分の考慮タイムというシステムになっている。日本の場合は一手30秒をなるべく使う人が多いけれど、中国では打つ手が決まっておればほとんど間髪を入れずに打ってるので考慮時間30秒使うということはあまりない。
日本の場合第一手目から30秒近く考慮時間をとることがよくある。多分にこれは試合前の精神統一のための時間だと思うけれど、中国人からみると第一手目の考慮時間は意味不明のようだ。
また日本では対局にあたって、対戦者の他に棋譜を読み上げる人とタイムを測定する2人の人が通常配置されているけれども、中国では対戦者が自ら対局時計を押してた。